日本語話者から英語の鏡を見る
分類
言語には、大きく分けて2つの分類方法があります。
品詞(ひんし): その言葉が「元々なんであるか」という素材の名前。(例:形容詞、名詞)
文の成分(ぶんのせいぶん): その言葉が文の中で「どんな働きをしているか」という役割の名前。(例:主語、述語)
品詞は「役者の名前」(佐藤さん、鈴木さん)文の成分は「劇中の配役」(王様役、家来役)と考えると分かりやすいでしょう。「佐藤さん(名詞)」が「王様役(主語)」をやることもあれば、「通行人役(目的語)」をやることもあります。
品詞(Parts of Speech)の種類
「品詞がいくつあるか」は、実は言語や学説によって異なりますが、ここでは日本の学校文法(橋本文法)と、英語(英文法)の例を挙げて比較しましょう。
日本の学校で教わる文法では、以下の10種類に分類されます。
| 分類 | 品詞名 | 特徴 | 例 |
| 自立語 (単独で意味が通じる) | 名詞 | 物の名前。 | 本、愛、私 |
| 動詞 | 動作や存在を表す。「ウ段」で終わる。 | 走る、ある | |
| 形容詞 | 状態や性質を表す。「い」で終わる。 | 美しい、高い | |
| 形容動詞 | 状態や性質を表す。「だ」で終わる。 | 静かだ、元気だ | |
| 副詞 | 用言(動詞など)を詳しくする。 | とても、ゆっくり | |
| 連体詞 | 体言(名詞)だけを詳しくする。 | 大きな、この | |
| 接続詞 | 文と文をつなぐ。 | しかし、だから | |
| 感動詞 | 感情や呼びかけ。 | ああ、はい | |
| 付属語 (単独では使えない) | 助動詞 | 意味を添える(活用する)。 | ~れる、~たい |
| 助詞 | 言葉の関係を示す(活用しない)。 | が、を、に |
英語には「形容動詞」や「助詞」がなく、代わりに「前置詞」や「冠詞(限定詞)」が存在します。
・名詞 (Noun)
・代名詞 (Pronoun)
・動詞 (Verb)
・形容詞 (Adjective)
・副詞 (Adverb)
・前置詞 (Preposition):in, on, at など。日本語の助詞に近い働きをします。
・接続詞 (Conjunction)
・間投詞 (Interjection):Oh, Wow など。
・(冠詞/限定詞):a, the など。
文の成分(Sentence Components)の種類
基本となるのは以下の5つ(英語の5文型などでもおなじみです)。
1、主語 (Subject – S): 動作の主(ぬし)。「~が」「~は」。
2、述語 (Predicate / Verb – V): 動作や状態そのもの。「~する」「~だ」。
3、目的語 (Object – O): 動作の対象。「~を」「~に」。
4、補語 (Complement – C): 主語や目的語が「どういう状態か」を説明する言葉。
例: I am happy. (私は幸せだ) → 「幸せ」は私=幸せなので補語。
5、修飾語 (Modifier – M): おまけ。詳しく説明する言葉。なくても文は成立する。
例: 赤いリンゴ。
言語起源の視点
「形容詞」という品詞は、すべての言語にあるわけではありません。
形容詞がない言語: 一部の言語では、「赤い」を「赤くある」という動詞として扱います。「花が美しい」ではなく「花が美し・している」といった感覚です。
主語があいまいな言語: 日本語はまさにそうですが、主語を言わなくても通じます。一方、英語は必ず主語を求めます(It rains. のように、意味のない It を置いてまで主語を作ります)。
このように、言語によって「いくつの引き出しを持っているか」は全く違うのです。
日本語と英語
英語という「全く異なる論理で動くOS」を学ぶと、日本語の特殊性が浮き彫りになります。
英語の視点: 「なぜ主語(S)がないと文が成り立たないのか?」
日本語の視点: 「なぜ主語がなくても通じるのか?」
英語と日本語は、言語のタイプとして対極にあります。
| 特徴 | 英語 (Brick Architecture) | 日本語 (Furoshiki) |
| 構造 | レンガ積み 単語を順番通りに積まないと崩れる。語順が命(SVO)。 | 風呂敷 中身(単語)を包んでしまえば形になる。語順は自由(助詞が役割を決める)。 |
| 主語 | 必須 誰がやったか責任を明確にする。意味のない Itを置いてでも主語を作る。 | 不要 文脈で分かれば言わない。「空気」や「場」が主語になることも。 |
| 数 | 厳格 単数か複数か(a book / books)を決めないと気持ち悪い。 | 曖昧 「本」と言えば、1冊でも複数冊でも通じる。 |
英語のこの「理屈っぽさ」「厳密さ」を知ることで、逆に日本語がいかに「受け手の察し」に甘えた、あるいは「共感」を重視した言語であるかが見えてきます。
視点
これは言語起源にも関わる話ですが、世界の見え方が違います。
英語(俯瞰視点):空の上から全体を見下ろしているような感覚です。「彼が、ボールを、蹴った」と、客観的な事実を並べます。
日本語(一人称視点):現場にいる自分の目線です。「(私が今見ている光景として)ボールが飛んでいった」など、自分中心の体験として語ることが多いです。
5文型(配置が命)
「英語という言語を運用するための設計図(ブループリント)」として捉え直してみましょう。
英語は「レンガ積みの建築」であれば、5文型とは、その「レンガの積み方の5つの基本パターン」のことです。パターンを見る前に、登場する「4人の役者(成分)」を定義します。これらがどう並ぶかで型が決まります。
S (Subject) = 主語
「~は」「~が」。動作の主人公。
V (Verb) = 動詞
「~する」「~だ」。結論。
O (Object) = 目的語
「~を」「~に」。動作のターゲット。(Sとは別のもの)
C (Complement) = 補語
「~という状態で」。SやOを説明する言葉。(SやOとイコールの関係)
※ M (Modifier) = 修飾語
「速く」「昨日本屋で」のような「お飾り」は、文の骨格には含めません。これを取り払って骨組みだけを見るのがコツです。
5つの設計図(The 5 Sentence Patterns)
英語は「語順(言葉の並ぶ順番)」が命です。順番が変わると意味が変わります。
第1文型:SV
「主人公が、動く。」
最もシンプルな形です。「誰が、どうした」だけで完結します。
Birds fly. (鳥は / 飛ぶ)
S = Birds
V = fly
I run (fast). (私は / (速く)走る)
”fast” はお飾り(M)なので、骨組みはSVだけ。
第2文型:SVC
「A = B である。」
ここが最初のポイントです。動詞(V)がイコール記号「=」の働きをします。
I am happy. (私は / 幸せだ)
私 (S) = 幸せ (C) という関係が成り立ちます。
He looks busy. (彼は / 忙しそうに見える)
彼 (S) ≒ 忙しい (C) 。
日本語では「忙しそうに」は副詞的ですが、英語では「彼は=忙しい状態」と捉えます。
第3文型:SVO
「Aが、Bを、どうにかする(矢印 →)。」
英語で最も多い形です。SからOへ、動作の矢印が向かいます。
I play tennis. (私は / テニスを / する)
私 (S) ≠ テニス (O) ですね。SとOは別物です。
私の動作がテニスという対象に向かっています。
第4文型:SVOO
「Aが、Bに、Cを、あげる(授与)。」
目的語が2つ連続する、お得なパターン。「誰かに、何かを」渡す系の意味になります。
I give you a present. (私は / あなたに / プレゼントを / あげる)
O1 = you(あなたに)
O2 = a present(プレゼントを)
英語では「You(あなた)」と「Present(物)」をただ並べるだけで、「~に、~を」という意味が発生します。日本語のように「に」や「を」といった助詞は不要。場所(順番)こそが意味なのです。
第5文型:SVOC
「Aが、Bを、Cの状態にさせる。」
これが一番英語らしく、かつ日本語母語話者が苦手な形です。
You make me happy. (あなたは / 私を / 幸せな状態に / させる)
O (me) = C (happy) の関係が成り立ちます。「私が幸せ」になるのです。
直訳すると「あなたは私を幸せに作る」となりますが、意訳では「あなたと一緒にいると私は幸せだ」となります。「原因(S)によって、結果(O=C)になる」という論理的な文によく使われます。
日本語との決定的な違い
この5文型という「鏡」を通して日本語を見てみましょう。
英語(配置の言語):「SVOO」のように、単語を置く場所が決まれば、自動的に「誰に」「何を」という意味が決まります。席順がすべてです。
日本語(タグ付けの言語):「私が、あなたに、プレゼントを、あげる」「プレゼントを、あなたに、私が、あげる」「あなたに、私が、あげるよ、プレゼントを」日本語は順番を入れ替えても意味が通じます。なぜなら、「が」「に」「を」という「タグ(助詞)」が各単語に貼り付けられているからです。
英語は「型(枠)」にはめる。
日本語は「タグ(荷札)」を貼る。
この違いがあるため、日本語の感覚のまま英単語を並べると、英語圏の人には全く意味不明な文になってしまうのです。
SVO型とSOV型 無生物主語
SVO型(英語) vs SOV型(日本語)
世界中の言語は、主語(S)、動詞(V)、目的語(O)の並べ方で、大きく2つの派閥に分かれます。
SVO型(英語、中国語など)
・I eat an apple. (私は・食べる・リンゴを)
・「誰が・どうした・何を」の順
SOV型(日本語、韓国語、トルコ語など)
・私は・リンゴを・食べる。
・「誰が・何を・どうした」の順。
この違いは、単なる「ルールの違い」ではありません。「情報を処理する順序(脳の使い方)」が決定的に違うのです。
「矢印」の英語、「風呂敷」の日本語
【英語(SVO)の世界観】
英語は「矢印(→)」の言語です。
・I(私が出発点)→ eat(食べるという動作が発射され)→ an apple(リンゴに着弾!)
動作主からエネルギーが出て、対象物にぶつかるまでのプロセスを時系列順に描きます。最も重要なのは「V(結論:どうしたのか?)」です。英語では、主語の直後にすぐ「食べるのか? 捨てるのか? 見るだけなのか?」という結論(動詞)を突きつけます。
【日本語(SOV)の世界観】
日本語は「風呂敷」の言語です。
・私(とりあえず登場)… リンゴを(材料を置いて)… 食べる(最後に包む!)
日本語では、最後の「動詞(V)」が来るまで、何が起こるか分かりません。「私は、リンゴを……(捨てた? くれた? 絵に描いた?)」と、最後まで可能性が残されています。最後の動詞が、それまで並べられた言葉たちを「風呂敷」のようにまとめて包み込む構造です。
日本語という視点を一旦置いて、英語という「論理マシン」を操作する
「第5文型(SVOC)」と、そこに潜む「無生物主語」という、英語特有の思考回路。
モノが「矢」を放つ世界
先ほど、英語は「矢印(→)」の言語であり、「誰が(S)→ どうした(V)」という因果関係を重視するとお話ししました。ここで英語は、驚くべき「編集」を行います。「原因さえあれば、人間じゃなくても主語(S)にしてしまえ」というルールです。
日本語の感覚(主役は人間)
日本語では、基本的に動作の主は「人間」や「生き物」です。例えば、「そのニュースを聞いて、私は驚いた」と言います。
主語:私(聞いたのも、驚いたのも私)
流れ:ニュースを聞く(状況)→ 驚く(感情の変化)
英語の感覚(主役は「原因」)
英語では、「驚きを引き起こした犯人は誰だ?」と考えます。犯人は「ニュース」です。すると、英語はこう言います。
The news surprised me.(そのニュースは・襲った(驚かせた)・私を)なんと、「ニュース(無生物)」が、まるで生き物のように「驚き」という矢を「私」にぶつけてくるのです。これが「無生物主語」です。
英語の世界では、石も、天気も、時間も、ニュースも、すべてが「私」に影響を与える「加害者(エイジェント)」になり得ます。一方、日本語の「私」は、状況の変化を受け入れる「感受性の器」なのです。
SVOC
この「無生物主語」が最も輝くのが、第5文型(SVOC)です。
この型は、以下のような物語を作ります。
「S(原因)が、O(対象)を、C(結果)の状態に変えてしまう」
例:Make(強制力のある矢印)
This song makes me happy.
S (This song): この歌(原因)が
V (makes): 作る(強制的に~させる)
O (me): 私を
C (happy): 幸せな状態に
直訳:「この歌は、私を幸せに作る」
意訳:「この歌を聞くと、私は幸せになる」
日本語との比較(赤入れ)
もしこれを日本語の発想(S=私)で英語にしようとすると、こうなりがちです。
× When I hear this song, I become happy.(私がこの歌を聞くとき、私は幸せになる)
文法的に間違いではありませんが、非常に「説明的」でまどろっこしい。
英語ネイティブは、SVOCを使って「原因(歌)」と「結果(幸せ)」をダイレクトに繋ぐ方を好みます。「歌(S)」というスイッチを押せば、自動的に「私(O)」が「ハッピー(C)」になる。この機械的なまでの論理のショートカットこそが、英語の正体です。
「責任の所在」
日本語:「私が」間違えた。
自分が主語になりがちです。責任や感情は自分の中にあります。
英語:「何かが」私を間違えさせた。
SVOCを使うと、責任を「外部」に転嫁できます。
例:”The bad weather kept us home.”(悪天候が、私たちを、家に居させた。)
日本語なら:「天気が悪いから、(私たちは)家にいた」
英語の感覚:「天気のやつが、俺たちを家に監禁しやがったんだ」
彼らは常に「何が(What)」原因で、こうなったのかを語っているからです。
冠詞(輪郭を描く)
日本語には「冠詞」が存在しない。
英語話者は「輪郭(アウトライン)」に執着する
あなたが何気なく「犬が好き」と言うとき、日本語では「犬」という言葉だけで十分愛らしい動物をイメージできます。しかし、英語の世界でうっかり冠詞や複数形をつけ忘れ、裸の “dog” を使ってしまうと、とんでもないことが起きます。
× I like dog.
英語ネイティブの耳には、これがどう聞こえるか。「私は、犬の肉が好きです(食べる意味で)」と聞こえます。あるいは、「犬という物質(毛皮とかミンチとか)」が好き、という猟奇的な響きを持ちます。英語の世界では、「形(輪郭)」があるものを「数えられる(可算)」とみなします。
a dog(1匹の犬):輪郭がある。生きて動いている。
dogs(複数の犬):個体がたくさんいる。
しかし、何もつけずに単に dog と言うと、それは「輪郭を失った犬」、つまり「物質としての犬(肉や素材)」を意味してしまうのです。
chicken(鶏肉)と a chicken(生きているニワトリ)の違いと同じです。
英語話者は、世界を見るときに「これは輪郭がある(個体)か?」「輪郭がない(物質・液体・概念)か?」を強烈に区別しています。一方、日本語話者はその境界線が曖昧で、すべてを「質感」や「概念」として捉える傾向があります。
「a」と「the」の正体
a / an
意味: 「数ある中から、適当に取り出したひとつ」。
語源: 「one」が弱まったもの。
イメージ: 暗闇の中で、パッとひとつだけにスポットライトを当てる感覚です。「どれでもいいから、とにかく一個」です。
I have a pen.(世の中にペンは沢山あるけれど、その中の適当な一本を、今私は持っている)
the
意味: 「その」。あなたも私も知っている「あれ」。
語源: 「that」が弱まったもの。
イメージ: 「せーの」で指を差せるものです。話し手と聞き手の間で、共通認識が取れている時に使います。
Close the door.(世の中のドアどれでもいいわけじゃなく、そこにあるそのドアを閉めてくれ)
なぜ英語(および西洋言語)は、ここまで「ひとつ、ふたつ」「特定のあれ」にこだわるのでしょうか?
契約社会と個の確立:「誰の」所有物か、「どの」責任かを明確にする必要がある社会では、「リンゴ」と曖昧に言わず、「私のリンゴ」「そのリンゴ」「ひとつのリンゴ」と定義する必要があります。
キリスト教的(一神教的)世界観:唯一絶対の神(The God)と、それ以外(a god / gods)を区別する。あるいは、「個」としての人間を確立する思想が、言語の解像度に影響を与えたとも言われます。一方、日本語は「共感の文化」です。「言わなくても分かるでしょ」という了解が前提にあるため、いちいち「その(the)」とか「ひとつの(a)」と指差す行為は、むしろ野暮ったく、他人行儀に感じられるのです。
お題:「私は昨日、本を読んだ。」
× I read book yesterday.
これだと「紙という物質を解読した」ような不自然さがあります。Bookには輪郭が必要です。では、どう冠詞をつけるか? 状況によって変わります。
I read a book yesterday.(「ある一冊の本」を読んだ。何の本かはまだ言ってないけどね。)
I read the book yesterday.(「ほら、前におすすめしてたあの本だよ」というニュアンス。)
I read books yesterday.(一冊じゃなくて、何冊か読んだ。)
英語話者は、口を開く前に、「相手はこの本を知ってるか?(a/the)」「1冊か複数か?(s)」を瞬時に判断・決定しているのです。
時間(現在・過去・完了)
日本語という言語は、時間に対して非常に「おおらか」です。「明日、行くよ(未来)」も「毎日、行くよ(現在)」も、同じ「行く」という形で済ませてしまいます。しかし、英語は「Time is Money(時は金なり)」の文化。時間の貸し借りに厳しい彼らは、「いつの話なのか?」を指定しないと気が済みません。ここでも、日本語の感覚のまま英語を話すと、大きな誤解を生みます。
「現在形」という名の詐欺
学校で習う「現在形(I do)」は、実は「現在行っていること」を表しません。
× I play tennis.(これを「今、テニスをしています」という意味で使うと間違いです)
英語の現在形(Present Tense)の本質は、「昨日も、今日も、明日も変わらない事実・習慣」です。タイムライン上の「今この一点」ではなく、過去から未来へ広くまたがる「太い帯」のようなイメージです。
I play tennis.→ 私は(普段・趣味として)テニスをします。(今は家で寝ているかもしれないが、テニスプレイヤーであることに変わりはない)
「今、まさにやっている最中」と言いたいなら、「現在進行形(I am playing)」を使わなければなりません。
現在形 = 昨日の敵は今日の友(不変の真理、習慣、職業)
進行形 = 今だけのライブ中継
「過去形」は、ただの「思い出のアルバム」
「過去形(I did)」これは、現在とは切り離された「遠い昔の点」です。
I lost my key. (私は鍵をなくした。)
この文が意味するのは、「過去のある時点で鍵をなくした」という歴史的事実だけです。
重要なのは、「で、その鍵は今どうなったの?」については何も言っていないという点です。(もしかしたら、その後で見つかってポケットに入っているかもしれないし、まだないかもしれない。それは『過去形』の管轄外なのです)英語の過去形は、「今とは関係ない、切り離された昔話」です。
「現在完了形(Have done)」
日本語には明確な区別がないため、理解しづらい「現在完了形(I have done)」。
Have(持っている) + Done(完了した状態)
つまり、「完了した状態を、今も手に持っている」という意味です。
「鍵」の例で比べましょう。
(過去形) I lost my key.
「鍵をなくしたよ(昨日の話だけどね)。」
今: 知らん。見つかったかも。
(現在完了形) I have lost my key.
直訳:「私は『鍵をなくした状態』を、今まさに持っている(Have)」
意味:「鍵をなくしてしまって、その結果、今ここにはないんだ」
現在完了形は、形こそ過去っぽいですが、視点は強烈に「今(現在)」に向いています。「過去に起きた出来事のせいで、今はこうなっている」と言いたい時に使うのです。
過去形: 遠くの壁に貼られた、一枚の古い写真。(今はもう関係ない)
完了形: 過去から現在に向かって伸びてくる、一本の矢印。(今に突き刺さっている)
時制の感覚
シチュエーション:お昼ごはん食べた?
A: Did you eat lunch? (過去形)
「(12時頃に)お昼食べた?(過去の事実確認)」焦点は「食べるという動作をしたか否か」。
B: Have you eaten lunch? (現在完了形)
「(お腹空いてる?)お昼もう食べた?(現在の状態確認)」焦点は「今、お腹いっぱいか? それともこれから一緒に食べに行くか?」
日本語ではどちらも「食べた?」で済んでしまいますが、英語では「事実を知りたい(過去形)」のか、「今の状況を知りたい(完了形)」のかで、明確に使い分けます。
整理
現在形: 普段の習慣・変わらぬ真理。(今の動作ではない!)
過去形: 今とは切り離された、遠い昔の点。
完了形: 過去を引きずって、今に影響を与えている状態。
この「時間の解像度」を手に入れると、英語のニュアンスが分かります。「I love you」と言うのと、「I have loved you」と言うのでは、重みが全く違うのです(後者は、過去からずっと愛していて、その愛を今も持っている、という長い歴史を感じさせます)。
前置詞(空間感覚)
日本語の「~で」や「~に」は、非常に便利な風呂敷です。「駅で会う」「電車で行く」「東京で暮らす」。全部「で」で済みます。しかし、英語の at on in は、単なる記号ではなく、カメラのレンズを通した「物理的なサイズ感」と「接触の感触」を表しています。
at = 「点」 (Point / 0次元)
これは「場所を指す点」です。広さも、奥行きも、厚みもありません。Googleマップに刺さっている赤いピンだと思ってください。
イメージ: 「あそこ!」と指差す感覚。
at the station
駅という建物の中にいるのか、外にいるのかはどうでもよく。「駅という地点」にいる、と言いたいだけです。待ち合わせ場所として指定するときに使います。
at 7:00
時間軸上の「7時」という一点を指します。
at は「通過点」や「ターゲット」のニュアンスを持ちます。「狙いを定めて(aim at)」という時も、相手を「点」として捉えているからです。
on = 「面への接触」 (Surface / 2次元)
日本の学校では「~の上に」と教わりますが、これは誤解の元です。on の本質は「上」ではなく、「接触(くっついている)」ことです。
イメージ: ピタッと何かに張り付いている感覚。
on the wall
壁に(垂直に)絵がかかっているのも on。
on the ceiling
天井に(逆さまに)ハエが止まっているのも on。
on the train / bus / plane / ship
なぜ「中」に乗るのに in ではなく on なのか?
歴史的に、これらは「床(デッキ)の上を歩ける大きな乗り物」だからです。「板(ステージ)の上に乗っている」という感覚です。一方、
in the car / taxi
車やタクシーは、天井が低く、体をかがめて「潜り込む」ものですね。歩き回れるステージ(面)がないため、後述する in(箱の中)を使います。
in = 「箱の中」 (Container / 3次元)
これは「枠線で囲まれた空間の中」にいる感覚です。
イメージ: 箱、部屋、あるいは境界線のあるエリアの中にすっぽり入っている。
in Tokyo
東京という「境界線を持ったエリア」の中にいる。
in the morning
「朝」という枠(時間帯)の中にいる。at 7:00(点)とは対照的に、in は時間の幅(ボリューム)を持っています。
この3つの違いを、同じ「カフェ」という単語で使い分けてみましょう。
I am at the cafe.
(点) 「今どこ?」「カフェにいるよ」。単なる現在地の報告。店の前にいるか中にいるかは重要ではありません。
I am in the cafe.
(中) 「雨が降ってきたから、カフェの中に避難してるよ」あるいは「店内でコーヒー飲んでるよ」。建物の中に包まれている感を強調します。
I am on the cafe.
(接触・上) これは通常あり得ませんが、スパイ映画などで「カフェの屋根の上によじ登っている」なら使えます。
この物理的な感覚は、抽象的な概念にも応用されます。
on my mind: (気がかり)
脳の表面(意識のステージ)に、心配事がピタッと張り付いて離れないイメージ。
in love: (恋している)
「愛」というピンク色のプール(空間)の中に、どっぷり浸かっているイメージ。
good at English: (英語が得意)
英語という分野の「一点」をピンポイントで突く能力があるイメージ。
at = 地図上の点(Point)
on = 面への接触(Line/Surface)
in = 箱の中(Box/Volume)
英語話者は、無意識に世界を「点・面・箱」でスキャンしています。「車に乗る」と言うとき、彼らは「狭い箱に入る(in)」と感じ、「電車に乗る」ときは「動く床に乗っかる(on)」と感じているのです。
関係代名詞(説明をくっつける1)
多くの日本人がここで挫折するのは、「思考の順番」が日本語と真逆だからです。
日本語は「サンドイッチ」、英語は「列車」
「赤い帽子を被っている少年」と言いたい場合。
日本語(前から詳しくする):[ 赤い帽子を被っている ] → 少年
日本語は、メインとなる言葉(少年)の前に、説明(具材)を全部乗っけます。
メインが出てくるまで、どんな少年か全部聞き終わるのを待たなければなりません。
英語(後から詳しくする):The boy → [ who is wearing a red hat ]
英語は、まずメイン(少年)を置きます。
その後に、「あ、そいつが誰かと言うとね…」と説明車両を連結していきます。
英語は「後出しジャンケン」の言語です。「少年を見たよ!」と言い切ってから、「…あ、赤い帽子のね」と付け足す感覚です。
WhoとWhich
who や which は、単なるつなぎ言葉ではありません。相手に対する「合図(フラグ)」です。
英語話者は、名詞(The boy / The book)を口にした後、説明を加えたい時に、脳内でこう叫んでいます。
Who: 「人だよ! これからその『人』の説明をするよ!」
Which: 「モノだよ! これからその『モノ』の説明をするよ!」
例文:I have a friend who speaks English.(私には英語を話す友達がいる)
I have a friend (私には友達がいるんだ)
ここで文を終えてもいいですが、どんな友達か言いたい。
…who (それはどんな人かと言うと…)
ここで聞き手は「お、人の説明が来るな」と身構えます。
…speaks English. (英語を話すんだよ)
説明完了。
日本語訳:「私には[英語を話す]友達がいます」
英語思考:「私には友達がいます。[それは誰かというと]英語を話します」
この「それは誰かというと(Who)」「それは何かというと(Which)」というツッコミを自分で入れながら話すのが、関係代名詞の正体です。
2つの文を溶接する
関係代名詞(Relative Pronoun)は、元々2つだった文を1つにまとめる「溶接工」の役割も果たします。
文A: I have a book. (私は本を持っている)
文B: The book is interesting. (その本は面白い)
【編集手順】
①共通しているパーツ(The book)を見つける。
②文Bの「The book(モノ)」を、接着剤「which」に変える。
③文Aの後ろに、文Bをくっつける。
I have a book which is interesting.(私は本を持っている…[それはどんなかというと]…面白いやつだ)
便利な万能接着剤「That」
「人かモノか、とっさに判断できない!」「Whoだっけ? Whichだっけ?」そんな時は、「That」を使ってください。That は、人にもモノにも使える万能接着剤です。
The man that I met… (私が会った男)
The dog that barks… (吠える犬)
日常会話では、Who/Which よりも That が使われることの方が多いほどです。ただし、「カンマ(,)」の後や、固有名詞の後など、Thatが貼れない高級な素材もあるので注意が必要です。
「目的語」が消える
関係代名詞には「省略(書かない)」できるパターンがあります。
The cake (which) I ate. (私が食べたケーキ)
The cake (ケーキがさあ…)
[which] (それは何かというと… ※言わなくても分かるから省略!)
I ate (私が食べたんだけどね)
なぜ省略できるのか?
「次に『I(私)』や『He(彼)』といった新しい主語が来たら、関係代名詞はいらない」というルールがあるからです。(※「目的格の関係代名詞」です)
The cake I ate was delicious.
英語のリズムでは、「名詞(Cake)+名詞(I)+動詞(ate)」と名詞が2回続くと、自動的に「後ろの名詞が前の名詞を説明している」と判断されます。
関係代名詞は、日本語のように「材料を全部揃えてから料理を出す」のではなく、「メインディッシュを出してから、ソースをかける」感覚です。
This is the house. (これが家です)
…which Jack built. (…ジャックが建てたね)
この「後から付け足し感覚」に慣れると、英語を話すのが非常に楽になります。文を終わらせるプレッシャーから解放され、「あ、説明足りないな」と思ったら which... と繋げればいいだけですから。
分詞(説明をくっつける2)
分詞(Participle)は「関係代名詞の『軽量化(圧縮)』バージョン」だからです。
「who」や「which」を使った少し重たい文章を、シュッと短くスタイリッシュにする技術。それが分詞です。関係代名詞が「丁寧な溶接」なら、分詞は「瞬間接着剤」。この2つをセットで学ぶと、英語の「説明する技術(修飾)」が完結します。
動詞が形容詞に化ける
「分詞」という漢字は、「詞(ことば)の一部を分担する」と書きます。正体は動詞なのですが、文の中では形容詞の働き(名詞を詳しくする係)を分担します。
現在分詞(~ing): 「~している(ライブ感)」
過去分詞(~ed): 「~された(完了・受け身感)」
ここでも「主語の矢印」の感覚が役立ちます。
~ing(現在分詞)
その単語から、エネルギーやオーラが外に向かって「放出」されている状態です。
A sleeping baby (眠っている赤ちゃん)
赤ちゃん自身が「スースー」という「眠る動作」をしています。
A boring teacher (退屈な先生)
ここが重要です。「退屈している先生」ではありません。「退屈だなぁ」というオーラを周囲に撒き散らしている(生徒を退屈にさせる)先生です。
その名詞が、「やっている側(加害者・発信源)」なら ~ing。
~ed(過去分詞)
こちらは逆です。誰かが放った矢が刺さって、影響を「受け取ってしまった」状態です。
A broken window (割れた窓)
窓が自分で割れたのではありません。誰かに割られ、その結果「割れた状態」になっています。
A bored student (退屈した生徒)
先生の「boring光線」を浴びて、「あーあ…」と退屈させられてしまった状態です。
その名詞が、「やられた側(被害者・受信機)」なら ~ed。
補足:「ed」がつかない理由(不規則動詞)
ここが英語の意地悪なところですが、歴史の古い基本的な単語ほど、「ed」をつけずに形そのものを変えてしまう(変身する)クセがあります。これを「不規則動詞」と呼びます。しかし、役割は「~ed」と全く同じです。
Regular(規則的):
Play → Played
Close → Closed (A closed shop = 閉められた店)
Irregular(不規則):
Break → Broken (× Breakedとは言わない)
Speak → Spoken (English is spoken = 話されている)
Write → Written (A written test = 書かれたテスト)
形は違っても、これらはすべて「~された」「~してしまった」という「完了・受動」のグループです。
関係代名詞からの「圧縮(編集)」
英語話者は、会話のスピードを上げるために、不要な言葉を削ぎ落とす(トリミングする)のが大好きです。
【元原稿:関係代名詞】
Look at the girl who is running in the park.(公園で走っている女の子を見て。)
【編集作業:圧縮】
「who is」…これ、言わなくても分かりますよね? 消しましょう。残った「running」をそのまま使います。
【校了:分詞】
Look at the girl running in the park.(公園を走ってる女の子を見て。)
これだけで通じます。
関係代名詞(Who)を使うと「説明しますよ!」という丁寧な合図になりますが、分詞(~ing)を使うと、「走ってるあの娘!」と、よりダイレクトでスピーディーな描写になります。
感情の形容詞
「私は興奮した!」と言いたい時。
× I am exciting.
○ I am excited.
なぜ exciting がダメなのか?
Exciting は「興奮エネルギーを放出している」という意味です。もし I am exciting. と言うと、「私は(存在自体が)刺激的で面白い人間です」という、とんでもない自己アピールになってしまいます(文法的には正しいですが)。
何かに刺激を「受けた」のであれば、矢が刺さった Excited (~ed) を選ばなければなりません。
The game was exciting. (試合はエキサイティングだった=興奮ビームを出していた)
The fans were excited. (ファンは興奮した=ビームを浴びた)
情報の「鮮度」
~ing: 今まさに動いている、または影響を与えている(Active)。
~ed: 終わってしまった、または影響を受けた(Passive)。
この感覚は、単に試験のためだけでなく、英語で自分の感情を正しく伝えるために不可欠です。自分が「発信源」なのか「受信機」なのか、常に意識してください。
仮定法(現実との距離)
仮定法(If…)こそが、英語の「過去形」の本当の正体を暴く鍵
日本人が最も不思議に思うのがこの例文です。
If I were a bird, I would fly to you.(もし僕が鳥なら、君のもとへ飛んでいくのに。)
「いま、鳥になりたい」という現在の妄想の話をしているのに、なぜ “were”(過去形) を使うのでしょうか?ここには、英語話者特有の「距離感」の哲学が隠されています。
「過去形」の正体は「距離」
時間_整理_過去形で、「過去形は、現在とは切り離された遠い昔の点」と書きましたが、英語の過去形の本質は「昔」ではありません。「距離(Distance)」なのです。
時間の距離: 現在から遠ざかる = 昔(Past)
人間関係の距離: 親しさから遠ざかる(一歩下がる) = 丁寧(Polite)
だから、「Can you?」より「Could you?(過去形)」の方が丁寧になります。相手から一歩距離を取っているからです。
現実との距離: 現実から遠ざかる = 妄想(Subjunctive)
英語話者は、「現実離れした話(妄想)」をする時、無意識に「現実から一歩後ろに下がる」感覚を持ちます。この「一歩下がる」という動きが、文法上では「過去形にする」という操作になるのです。
「If I am」と「If I were」の違い
どちらも「もし~なら」と訳せますが、ニュアンスは天と地ほど違います。
現実的な条件(If + 現在形)
If I am rich, I will buy a car.(もし私が金持ちなら、車を買うよ。)
これは「現在形(現実)」を使っています。つまり、距離を取っていません。「宝くじが当たってるかもしれないから、通帳見てくるわ。もし金持ちだったら買うね」という、「ありえる話(Real)」です。
完全な妄想(If + 過去形)
If I were rich, I would buy a car.(もし僕が金持ちだったらなあ…車を買うのになあ。)
ここで「過去形(現実からの距離)」を使いました。これは、「現実は金持ちじゃないんだけど、もし仮にそうだったとしたら」という「ありえない話(Unreal)」の合図です。
英語話者は、動詞の形(現在か過去か)を見るだけで、相手が「本気で言ってるのか(Real)」、「ただの夢物語を語っているのか(Unreal)」を瞬時に判断しています。
I wish…(~ならいいのに)
I wish I were a bird.(鳥だったらいいのになあ。)
これも「今」の願いですが、「現実は鳥じゃない」という現実との距離があるため、過去形 were を使います。(ちなみに、話し言葉では I wish I was も使われますが、正式な書き言葉や格調高い表現では were が好まれます。「私が単数だろうがなんだろうが、そんな現実は無視だ!」という勢いで、形を崩した were を使うとも言われています)
仮定法過去完了
「あの時、あんなこと言わなければよかったなあ(過去の後悔)」はどうなるか?
・話の内容は「過去」のこと。
・でも「現実は言ってしまった」ので、現実からの「距離(+1)」が必要。
・過去(Time)+ 距離(Distance)= 過去のさらに奥(大過去)
だから、Had + 過去分詞(過去完了形) を使います。
I wish I had not said that.(あんなこと言わなきゃよかったなあ。)
語源(接頭辞)
ネイティブスピーカーは、単語を「ブロック(部品)」の集合体として見ています。漢字に「へん(部首)」や「つくり」があるのと同じです。
海(Sea) = 「水(さんずい)」+「毎(つくり)」
Import(輸入) = 「Im(中へ)」+「Port(運ぶ)」
この「部品の正体」を知れば、知らない単語に出会っても意味を推測できるようになります。
単語の3層構造(頭・体・尻尾)
接頭辞 (Prefix): 方向や位置を決める(頭)。
例:In-(中へ), Ex-(外へ), Re-(再び)
語根 (Root): 単語の「核」となる意味(体)。
例:Port(運ぶ), Spect(見る)
接尾辞 (Suffix): 品詞(名詞か動詞か等)を決める(尻尾)。
例:-tion(~すること), -able(~できる)
Spect(見る)
最も分かりやすい語根、Spect(スペクト)で実験しましょう。これはラテン語で「見る」という意味です。漢字で言えば「見」という部首のようなものです。この「Spect」に、色々な「接頭辞(方向)」をくっつけてみましょう。
In (中を) + Spect (見る)
Inspect
中をじっくり見る = 「検査する」
ネイティブスピーカーは、単語を「ブロック(部品)」の集合体として見ています。漢字に「へん(部首)」や「つくり」があるのと同じです。
海(Sea) = 「水(さんずい)」+「毎(つくり)」
Import(輸入) = 「Im(中へ)」+「Port(運ぶ)」
この「部品の正体」を知れば、知らない単語に出会っても意味を推測できるようになります。
単語の3層構造(頭・体・尻尾)
接頭辞 (Prefix): 方向や位置を決める(頭)。
例:In-(中へ), Ex-(外へ), Re-(再び)
語根 (Root): 単語の「核」となる意味(体)。
例:Port(運ぶ), Spect(見る)
接尾辞 (Suffix): 品詞(名詞か動詞か等)を決める(尻尾)。
例:-tion(~すること), -able(~できる)
Spect(見る)
最も分かりやすい語根、Spect(スペクト)で実験しましょう。これはラテン語で「見る」という意味です。漢字で言えば「見」という部首のようなものです。この「Spect」に、色々な「接頭辞(方向)」をくっつけてみましょう。
In (中を) + Spect (見る)
Inspect
中をじっくり見る = 「検査する」
Re (後ろ/再び) + Spect (見る)
Respect
通り過ぎた後に振り返って二度見る = 「尊敬する」
(※価値があるから振り返るのです)
Pro (前・未来) + Spect (見る)
Prospect
前の方を見る = 「見通し、展望」
(ビジネスで「プロスペクト(見込み客)」と言うのはここから来ています)
Su(b) (下から) + Spect (見る)
Suspect
下から疑わしそうにじろっと見る = 「疑う」「容疑者」
Ex (外へ) + Spect (見る)
Expect
(来るのが分かっていて)窓の外を見て待っている = 「期待する」
「Port(運ぶ)」
もう一つ、非常に便利なのが Port(ポート) です。「港」という意味もありますが、語源(Etymology)的には「運ぶ」です。
Im (中へ) + Port (運ぶ) Import = 「輸入する」
Ex (外へ) + Port (運ぶ) Export = 「輸出する」
Trans (越えて/横切って) + Port (運ぶ) Transport = 「輸送する」
(大陸を横切って運ぶイメージ)
Pass (通る) + Port (港/門) Passport = 「旅券」
(港や門を通るための許可証)
Op (反対へ) + Port (港) + unity (こと) Opportunity = 「機会(チャンス)」
(元々は、風向きが変わって「港に向かって(Op-Port)」船が入れるようになった絶好のタイミング、という意味です)
接頭辞リスト
語根(体の部分)はたくさんありますが、接頭辞(頭の部分)は数が限られています。
| 接頭辞 | イメージ | 例 | 意味の推測 |
| Pre- | 前に(時間的) | Preview | 前もって見る=試写、プレビュー |
| Re- | 再び・後ろへ | Return | ターンして戻る=帰る |
| Ex- | 外へ | Exit | 外へ行く場所=出口 |
| Sub- | 下へ | Subway | 道の下=地下鉄 |
| Co-/Com- | 共に(一緒に) | Company | 一緒にパン(Pan)を食べる仲間=会社、仲間 |
| Uni- | 1つ | Unicorn | 1つの角を持つ獣=ユニコーン |
| Inter- | ~の間 | Internet | ネットワークの間をつなぐ=インターネット |
句動詞
英語には「同じ意味なのに2つの言い方がある」という大きな特徴があります。
語源ルート(ラテン語系): Exclude (お堅い、書き言葉)
句動詞ルート(ゲルマン語系): Shut out (カジュアル、話し言葉)
Ex-(外へ)は、日常会話では Out に変わるだけなのです。ネイティブが日常会話の9割で使う、「基本動詞(Get/Take)+前置詞」。
句動詞(Phrasal Verbs)
日本語でも、漢語(熟語)と大和言葉(和語)があります。
漢語(お堅い): 「帰宅する」
大和言葉(日常): 「家に帰る」
英語も同じです。先ほどの「語源」での単語は「漢語」にあたります。友達と話す時にはあまり使いません。日常会話では、簡単な動詞に「矢印(前置詞)」をくっつけた「句動詞」を使います。
変換テーブル
| 語源(お堅い) | 接頭辞の意味 | 句動詞(日常) | 意味 |
| Exclude | Ex (Out) | Shut out | 締め出す |
| Postpone | Post (After) | Put off | 後ろに置く=延期する |
| Investigate | In (In) | Look into | 中を覗く=調査する |
| Return | Re (Back) | Come back | 戻る |
| Tolerate | (持ちこたえる) | Put up with | 一緒に上に置く=我慢する |
「難しい単語(語源)」と「簡単な単語の組み合わせ(句動詞)」は、実は同じ動き(Motion)を表しているのです。
Get
句動詞の世界で最も重要なのが、「Get」です。学校では「手に入れる」と習いますが、この訳語は忘れてください。Getの本当のイメージは、「変化(ワープ)」です。「ある状態から、別の状態へ動く」こと全般を指します。この「Get(動く)」に、「場所(前置詞)」を足すとどうなるか。
Get + Out(外へ)
Get out!
「外へ動け」=「出て行け!」
(車から)降りる、という意味にもなります。
Get + Over(乗り越えて)
I got over the cold.
風邪という壁を「Over(山なりに越えて)」向こう側へ動いた。
= 「(病気や失恋を)克服する、治る」
Get + Up(上へ)
I get up at 7.
体を「上へ」動かす。
= 「起きる」
Get + On(接触して/ステージへ)
Get on the train.
電車の床(ステージ)の上へ動く。
= 「(電車・バスに)乗る」
Get + Along(線に沿って)
I get along with him.
彼と並んで、道に「沿って(Along)」動いている。
= 「彼とは上手くいっている(仲が良い)」
イメージで捉える「Take」と「Put」
他の基本動詞も、コアイメージさえあれば理解できます。
Take = 「ガシッと掴んで、持っていく」
Take out: 中にあるものを掴んで、外へ → 「持ち帰り」
Take off: くっついている場所(On)から、引きはがす(Off) → 「離陸する」「(服を)脱ぐ」
Take over: 誰かの荷物を、自分の場所へ引き取る(Over) → 「引き継ぐ」
Put = 「ポンと置く」
Put on: 肌の上にポンと置く → 「着る」(Take offの逆)
Put off: 今やるべき予定を掴んで、離れた場所(Off)に置き直す → 「延期する」
Put away: あっちの方(Away)へ置く → 「片付ける」
語源(Inspect, Exclude)は、フォーマルな「静止画・設計図」の世界。
句動詞(Look into, Shut out)は、動きのある「動画・アニメーション」の世界。
この2つは、根底にある「空間イメージ(In, Out, Up, Down)」で繋がっています。
例えば「Cancel(中止する)は、Call off(名前を呼んで離れさせる)と同じだな」という直感が働くはずです。これが、話がつながるということです。
音(Sound)
なぜ英語は「書いてある通り」に読まないのか?
英語は、15世紀頃に「大母音推移(Great Vowel Shift)」という、発音が劇的に変わる事件が起きました。しかし、その少し前に「印刷技術」が発明され、スペル(綴り)だけが先に固定されてしまったのです。つまり、英語のスペルは「数百年昔の発音の化石」のまま、音だけが現代風に進化してしまった。これが「ズレ」の正体です。この化石を解読する技術が、「フォニックス(Phonics)」です。
アルファベットの「名前」と「音」
アルファベットには「2つの顔」があります。
名前(Name): エイ、ビー、シー…(アルファベット読み)
音(Sound): ア、ブ、ク…(実際の音)
多くの日本人は「名前」しか知りません。しかし、単語の中では「音」が主役です。
A
名前:エイ
音:「ア」と「エ」の中間音(Appleのア)
P
名前:ピー
音:「プッ」(唇を破裂させる空気の音だけ。声帯は震えない)
「MAP」は、「エム・エイ・ピー」ではなく、「ム(M)・ア(A)・プッ(P)」と音を足し算して「マップ」になります。まずは、「文字を音響記号として見る」視点を持ってください。
日本人最大の敵、「曖昧母音(シュワ /ə/)」
英語の発音が聞き取れない最大の原因。それは、英語特有の「やる気のない音」の存在です。
日本語は「ア・イ・ウ・エ・オ」と、全ての母音を同じ強さ、同じ長さでハキハキ発音します。しかし英語は、「アクセントのある場所以外は、徹底的にサボる」というルールがあります。この「サボった音」を記号で ə(シュワ) と書きます。口を半開きにして、弱く短く「ァ」とも「ゥ」ともつかない音を出します。
Banana (バナナ)
日本語: バ・ナ・ナ (全部強い)
英語: Bə – NA – nə (バ・ナァ・ナ)
真ん中の NA だけ強く長く言います。前後の Ba と na は、アクセントがないので、エネルギー切れのように「ブァ…」「ヌァ…」と潰れます。
英語のリズムは「強・弱・弱・強」。
ネイティブが早口に聞こえるのは、この「弱(シュワ)」の部分を一瞬で通過しているからです。「重要なところ以外は聞こえなくていい」のです。
音の連結(リンキング)
次に、「単語がつながる」現象です。英語話者は、単語の語尾の子音と、次の単語の母音を、磁石のようにくっつけます。
Check it out. (調べてみて)
日本語読み: チェック・イット・アウト
英語の編集:
Checkの k + itの i = Ki (キ)
itの t + outの ou = Tou (タウ)
結果: Che-ki-rau-t (チェキラウ)
※ t は母音に挟まれると、日本語の「ラ行」に近い音に変化します(フラップT現象)。
だから Water は「ワラ」に、Letter は「レラ」に聞こえます。彼らは早口言葉を言っているのではなく、音を滑らかにつないでいる」だけなのです。
この章のあとがき
言語は「意味不明な記号の羅列」ではなく、論理的な構造を持ち、歴史的な背景を背負い、リズムを持って躍動する「生き物」。言語を学ぶということは、単に翻訳できるようになることではありません。「世界を見るための、もう一つの新しい目」を手に入れることです。
英語の “Thank” (感謝する)という言葉は、実は “Think” (思う・考える)と同じ語源を持っています。 誰かのことを深く「想う(Think)」ことが、そのまま「感謝(Thank)」になる。 言葉とは、かくも美しく、人間の心を映し出す鏡なのです。